平成28年地価公示を概観して

 去る3月毎年のことであるが、地価公示が発表された。

 全国の全用途平均では8年ぶりに上昇に移行となったが、地方圏では下落幅は縮小するものの各用途ともに下落している。一方で、三大都市圏では、各用途ともに上昇となっているが、地方圏においても中枢都市においては、三大都市圏以上の騰勢を示している。

 以上の概要を数字で示すと下表のとおりである。

 

 

住宅地

商業地

全用途

27公示

28公示

27公示

28公示

27公示

28公示

全国

▲0.4

▲0.2

▲0.0

0.9

▲0.3

0.1

三大都市圏

0.4

0.5

1.8

2.9

0.7

1.1

 

東京圏

0.5

0.6

2.0

2.7

0.9

1.1

大阪圏

0.0

0.1

1.5

3.3

0.3

0.8

名古屋圏

0.8

0.8

1.4

2.7

0.9

1.3

地方圏

▲1.1

▲0.7

▲1.4

▲0.5

▲1.2

▲0.7

 

地方中枢都市

1.5

2.3

2.7

5.7

1.8

3.2

その他

▲1.3

▲1.0

▲1.8

▲1.3

▲1.5

▲1.1

                 

 国土交通省によれば、このような推移を示した地価動向の背景として次の通り指摘している。住宅地については、全国的な雇用情勢の改善や、住宅ローン減税等の施策による需要の下支え効果によって、商業地については、外国人観光客の増加などによる店舗、ホテル等の需要の高まりや主要都市でのオフィス空室率の低下などによる収益性の向上などの背景から不動産投資意欲は旺盛で、いずれの用途も地価は総じて堅調に推移したとみている。

 ここで、個別地点の変動率を見てみよう。

 

 まず、住宅地の変動率ベストテンの地点をみると、第1位は、倶知安-3で19.7%の上昇を示している。価格形成要因の概要(以下概要という。)によれば、外資による大規模なリゾートホテルなどの開発が始まったことによる影響とのことである。以下第2位から第7位まで札幌が占めているが、札幌を中心に外国人観光客は相当に増加している模様で、こうした状況が住宅地へも直接的、間接的に影響し需要が激増している可能性が見て取れる。一方で、市内でも傾斜地等の災害危険区域にある地点は下落しているとの情報もある。続いて第8位と第10位にいわき市が入るが、これは一昨年来の傾向で福島第一原発事故による帰還困難者が近接する海岸沿いの拠点都市であるいわき市に移住地を求めているための需要の増加に起因している。ベストテンのうち1地点のみ東京が入っており、第9位にランクされたのが南麻布の地点である。プレミアムマンション市場が活気づいており、都心3区を代表してこの地点が上がったものである。

順位

住宅地

標準地番号

都道府県

標準地の所在地

平成27年公示価格 円/m2

平成28年公示価格 円/m2

変動率 %

1

倶知安-3

北海道

虻田郡倶知安町字旭305番38外

7,100

8,500

19.7

2

札幌中央-1

北海道

札幌市中央区大通西28丁目203番10 『大通西28-2-5』

227,000

263,000

15.9

3

札幌中央-19

北海道

札幌市中央区宮の森3条7丁目55番 『宮の森3条7-3-22』

129,000

149,000

15.5

4

札幌中央-6

北海道

札幌市中央区北14条西15丁目35番25 『北14条西15-3-13』

80,000

92,000

15.0

5

札幌中央-12

北海道

札幌市中央区南4条西23丁目11番3内 『南4条西23-2-21』

142,000

163,000

14.8

6

豊平-26

北海道

札幌市豊平区旭町3丁目76番150外 『旭町3-2-27』

96,000

110,000

14.6

7

札幌中央-14

北海道

札幌市中央区北8条西18丁目2番1外

104,000

119,000

14.4

8

いわき-55

福島県

いわき市泉ケ丘1丁目19番16

35,700

40,500

13.4

9

港-16

東京都

港区南麻布4丁目19番1外 『南麻布4-9-6』

2,190,000

2,480,000

13.2

10

いわき-19

福島県

いわき市平下平窪3丁目4番5

46,300

52,300

13.0

 

 次に、商業地の変動率ベストテンの地点をみると、トップに大阪心斎橋筋の地点で45.1%という暴騰を示し、以下第3,5,7,10位を除いて全て大阪市の中心部が占めている。大阪市以外では、第3位に名古屋市中村区38.4%、第5位に同区名駅36.0%、第10位に札幌市中央区26.4%が入った。概要によれば、大阪市中心部は、圧倒的な観光客の増加に伴う直接的な収益性の向上に併せ新たな投資意欲が激増していることが大きな要因と捉えている。札幌市についても同様の要因と思料される。また、名古屋市については名古屋駅前の再開発の進行やリニア関連期待感もあり当地区の相対的位置付けが上昇しているためとみている。いずれにしても、アジア圏を中心とする外国人観光客の激増は、全国的に拠点となる商業地に対して大きなインパクトを与えたといえそうである。

順位

商業地

標準地番号

都道府県

標準地の所在地

平成27年公示価格 円/m2

平成28年公示価格 円/m2

変動率 %

1

大阪中央    5-23

大阪府

大阪市中央区心斎橋筋2丁目39番1 『心斎橋筋2-8-5』

5,700,000

8,270,000

45.1

2

大阪中央    5-19

大阪府

大阪市中央区道頓堀1丁目37番外 『道頓堀1-6-10』 (づぼらや)

2,020,000

2,830,000

40.1

3

名古屋中村  5-11

愛知県

名古屋市中村区椿町1501番外 『椿町15-2』 (ミタニビル)

2,290,000

3,170,000

38.4

4

大阪中央    5-2

大阪府

大阪市中央区宗右衛門町46番1外 『宗右衛門町7-2』 (Luz(ラズ)心斎橋)

7,010,000

9,550,000

36.2

5

名古屋中村  5-22

愛知県

名古屋市中村区名駅2丁目3603番 『名駅2-36-10』 (松岡第二ビル)

1,140,000

1,550,000

36.0

6

大阪北     5-16

大阪府

大阪市北区茶屋町20番17 『茶屋町12-6』 (エスパシオン梅田ビル)

1,930,000

2,550,000

32.1

7

金沢5-13

石川県

金沢市広岡1丁目112番外 『広岡1-1-18』 (伊藤忠金沢ビル)

343,000

450,000

31.2

8

大阪北5-3

大阪府

大阪市北区小松原町18番3 『小松原町4-5』 (珍竹林)

1,060,000

1,350,000

27.4

9

大阪中央    5-36

大阪府

大阪市中央区難波3丁目27番27外 『難波3-6-11』 (なんば池田ビル)

3,650,000

4,620,000

26.6

10

札幌中央    5-13

北海道

札幌市中央区南1条東2丁目8番1 (サンシティビル)

348,000

440,000

26.4

               

 

 最後に、工業地についてみてみると、第1位に千葉県船橋市潮見町の地点13.7%が入り、千葉・東京・神奈川と首都圏の地点が殆どを占めた。これは、物流関連需要の大幅な拡大により大型物流施設用地の需要が沸騰しており、特に大きな人口規模を有する首都圏の工業地の地価が上昇したものである。また、神奈川や埼玉などの方面では圏央道の開通に伴う利便性の向上によるところも大きい。

順位

工業地

標準地番号

都道府県

標準地の所在地

平成27年公示価格 円/m2

平成28年公示価格 円/m2

変動率 %

1

船橋9-5

千葉県

船橋市潮見町20番3

62,000

70,500

13.7

2

柏9-3

千葉県

柏市青田新田飛地字元割220番1

63,000

70,500

11.9

3

大田9-2

東京都

大田区東海2丁目7番1 『東海2-1-2』

468,000

523,000

11.8

4

神奈川寒川9-1

神奈川県

高座郡寒川町田端1590番2

73,000

80,000

9.6

5

厚木9-1

神奈川県

厚木市緑ケ丘5丁目2025番2外 『緑ケ丘5-1-2』

74,000

81,000

9.5

6

厚木9-5

神奈川県

厚木市長谷字柳町260番16外

91,800

100,000

8.9

7

糸満9-1

沖縄県

糸満市西崎町5丁目8番7外

22,800

24,700

8.3

8

大田9-1

東京都

大田区東糀谷6丁目1335番1外 『東糀谷6-2-16』

236,000

255,000

8.1

9

厚木9-6

神奈川県

厚木市酒井字上反町3017番外

97,300

105,000

7.9

10

柏9-1

千葉県

柏市新十余二2番1外

90,000

97,000

7.8

参考文献:国土交通省土地総合情報ライブラリー「平成28年地価公示の概要」

(文責:岩﨑彰)2016.05.20)

 

アベノミクスについて想う

 昨年の12月に組閣された安倍内閣は、とにかく、威勢が良い。特に、「アベノミクス」といわれる経済政策は、魔法の杖のように、長い間低迷するわが国経済を一気に活性化させてしまう勢いである。

 安倍総理によれば、この政策は、三本の矢で構成されており、まず、一本目の矢が金融の大幅な緩和、特に、わが国の中央銀行の専権事項ではあるが、日銀券の大量増刷、そして二本目の矢が、公共事業の拡大による財政政策(現在わが国の需給は20兆円の需要不足に陥っているため、官需によってこれを補うというもの)、最後の矢が、成長戦略(このキーワードは、健康、エネルギー、次世代インフラ、そして世界を引き付ける地域資源の4つである)といわれる。この三本の矢で構成される経済政策を実践することによって、わが国の失われた20年ともいわれるデフレ経済から脱却して2%のインフレを実現し、GDPレベルで3%以上の名目成長を実現するという。

 安倍総理のこの政策は、イェール大学名誉教授であり日本人で最もノーベル賞に近いといわれる浜田宏一氏が絶賛しており、ノーベル賞をすでに受賞しているポール・クルーグマン教授も高く評価している。

 リフレ論者といわれるこうした大物経済学者の擁護はあるものの、国内的には、日銀にインフレターゲットを持たせる大胆な金融緩和に厳しい批判の声は学者の中にも相当根強いものがある。

 一方で現実の市場はどうかというと、昨年の11月に民主党の野田元総理が退陣の意向を表明するや一気呵成に円安、株高で反応し、アベノミクス期待に燃え上がってしまった。

 為替でいうと対ドルベースで78円前後であったものが100円近くまで売られ、日経平均ベースの株価は8000円前後から14000円台まで上昇しており、何が起こったのとでもいう感じである。

 株は、上がるに超した事はない。例えば、私は株を持っていないから関係ないという人がいても、実際には、生命保険基金の運用や年金基金の運用成果向上の恩恵は受けるわけで、無関係と言い切れるわけでもない。

 今、安倍政権は5ヶ月が経過しようとしており、その成果について問われ始めようとしているが、今後どうなっていくのか。

 すでに円安の負の影響を懸念する声が反アベノミクス派から出始めているが、果たして現実の世界はどうなっていくのか。

 ここで、私見を申し上げたい。

 まず、円安について、リーマンショック前110円という対ドルレートであったことを考えると、現在の100円弱の水準は決して円が安すぎるわけではない。むしろそのことによるわが国の輸出産業のへの好影響は甚大である。すなわち、コスト削減の限界に挑戦していたわが国の輸出産業は、円安によって莫大な利益を生む、或いは、コスト削減の努力を不要とすることができるという状況が現出しているはずである。

 もちろん、輸入品、すなわち石油や鉄鉱石をはじめとする資源の輸入価額が高騰し、ユニクロをはじめとする輸入で成り立っている企業は大いなる負の影響を受けるのは事実である。

しかし、わが国は、元来、資源を輸入し加工して付加価値を上げそれを輸出して国を成長させてきた国である。しかし、円高の結果、国内での製造はコスト的に限界に達し、中国や東南アジア方面の発展途上国に生産拠点を移さざるを得なかった。

こうした状況を前提とすれば、今回の円安は、かろうじて国内に残っていた生産拠点にとって息を吹き返すことができる最大のチャンスでもある。同時に、海外に出て行こうとするわが国の製造業界にとって、それに歯止めをかける大きな楔でもある。

また、私は、インフレについてあまり多くを期待しないし、2%のインフレターゲットは相当厳しい数値と考えているが、少なくとも、不動産鑑定士として言わせていただくが、日本の不動産はあまりにも安くなりすぎていると考えている。一般物価水準のインフレには多くを期待しないが、少なくとも資産に限ってのインフレは大いに期待している。その意味で、アベノミクス効果によって先進諸外国に比べて妥当なレベルまで不動産の価格水準が回帰することを切に願っている。同時に、将来的にも資産が上昇していく社会を構築して、これから続く次世代の先行き期待感も回復させてほしいと願っている。

いずれにしても、アベノミクスという経済政策によって、20年近く鬱屈したわが国民の意識を変革し、前向きなそして将来への期待感に満ちた社会の構築を期待したいところである。

(文責:岩﨑彰)

世代間格差

世代間格差というと、最近最も気になる話題としては、年金を支払った分を超えてもらえる現在の高齢世代と将来支払った分をもらえない若者世代の世代間格差があります。政府も、「税と社会保障の一体改革」を標榜して取り組んでいますが、中々妙案はありません。

 

資産形成という視点においても、大きな世代間格差が生じています。

例えば、昭和22年に社会人となり、昭和30年に住宅(土地)を購入し、昭和60年に会社をリタイアしたサラリーマンは、大きな資産形成ができました。6大都市圏では、住宅地の値段はこの間で平均70倍以上に上がっています。この間の平均給与の上昇率は17倍程度ですから、先買いのメリットが大きくあったということです。お金を貯めてから土地を買うより、ローンでお金を借りて先に買っておけば、土地の値上がり益を大きく享受できたということです。また、この世代は、社会人となってから定年退職まで右肩上がりの経済社会でありました。給料も毎年相応にベースアップし、職階に応じて賃金も上昇していった恵まれた時代といえるでしょう。定年で会社を退職すれば、相応の退職金を手にし、住宅の敷地は大きな含み益を持った資産となり、さらに、年金は、最近でこそ減額の話もありますが、既に、支払った保険料に比較すれば十分元を取っています。もちろん、一方で、過酷な戦争を経験しており、戦死者も数多く出している悲惨な世代でもあります。

 

次に挙げる世代は、我々団塊の世代です。戦後数年後のどさくさの時代に生まれ、昭和40年代半ばに社会人となり、昭和60年前後に住宅を購入、平成20年頃に定年を迎えた世代です。高度経済成長も経験していますが、同時に、バブル経済も、そして、デフレ経済も経験するという経済的には最も波乱に富んだ時代を生きた世代ということもできるかと思います。

バブル直前期に住宅を購入しているが、現在の住宅地の値段は昭和60年から見ると△10弱%程度であり、大きな損失はない。しかし、資産形成という意味では住宅購入が全く貢献しなかった世代といえます。また、40歳代前半でバブル崩壊を経験しており、企業の倒産や解雇などで悲惨な経験をした世代でもあります。年金についても、正に、先行き不透明で老後の生活には不安感を否めない世代といえます。

団塊の世代は、文字通り各年齢層の中で最も人口が多く、小さい頃からすし詰め学級、プレハブ校舎、マスプロ教育などこの世代に特有な言葉もあり、大変な競争社会の中で生きてきた世代です。

 

最後に、挙げる世代は、昭和40年前後に生まれ、昭和60年代前半に社会人となり、平成10年代にマンションや建売住宅を購入した世代です。高度経済成長期に幼児期を過ごし、社会人となるころはバブル経済の予兆がみられ、社会人となって数年を経たころにバブル経済が崩壊し、日本経済が底なし沼に沈んでいくような苦しい時代に入り、現在40代後半の現役世代です。

そろそろ結婚でもしようかという20代後半以降、ずっとデフレ経済の中にあり、日本を代表するような大企業が倒産したり、財閥系を越えた大手企業の合併が進むなどかつてありえないようなことが現出する経済社会となっています。

購入したマンションや建売住宅は、ローンの残債よりも価値が下がってしまっており、買い替えもままならない。住宅を購入するよりも貯金をしていた方がマシだったという世代です。賃金上昇が期待できず、住宅の価格が毎年値下がりしていくという経済社会にあっても、いろいろな事情で持ち家への関心は高いものがあり、こうした悲劇的な事態が全国的に広がっています。

ところで、この世代は、払った年金が回収できない世代とも言われています。子供もまだ大学生以下で、子育て費用も嵩む世代なのです。

国は、GDPの2倍の負債を抱えておりながら、なお、税収が40兆円なのに国家予算は90兆円というアンバランス、益々国の借金は拡大の途上です。明日のギリシャにならないように財政健全化が急務とされ、大幅な消費増税が図られようとしております。

 

世界のなかで日本の経済的位置づけは、ここ20年で大きく下げ、21世紀は日本の世紀と讃えられた時代が夢のようです。平成9年に民間サラリーマンの平均年収は467万円あったのですが、平成22年には412万円に落ち込んでおり、年収300万円以下のサラリーマンは全体の40.5%(H22)でさらに拡大基調にあるとのことです。一方で、生活保護世帯は、過去安定期において概ね70万世帯程度であったものが、近年急増しており、昨年には150万世帯に達している。

 

日本の格差社会は、年収というフローの所得で大きな格差を生んでおり、中には自身で生活を支えきれない層の急増も生んでいます。一方で、本稿で述べてきたように世代においての資産格差も大きなものがあります。

担税力をフローとストック両面で分析し、日本が将来共に安定的に持続可能な社会保障負担と給付、租税制度を構築する必要があります。

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